日本の公教育のなかでは、同調圧力や教育制度、環境設計の前提によって、神経特性のある子どもが学びにくさ・生きづらさを抱えやすい場面が少なくありません。
だからこそ、目の前の子どもの様子をよく観察しながら、
「この子にとって、どんな環境なら力が発揮されるのか」
という視点で、親側の視座を前向きに更新し続けること(周りへの配慮は基本前提!)が大切だと感じています。
私自身、神経特性を「問題」ではなく、ひとつの個性として捉え、その個性をどう活かすかという観点で、日々試行錯誤しています。
ADHDをめぐる見方、文脈の変化
2025年から2026年にかけて、ADHDを取り巻く言説には、
従来の医学的な「欠陥モデル」から、社会経済的な「資産モデル」へと移行する傾向も見受けられるようになりました(少なくとも、企業・働き方の文脈では)。
かつては、不注意・多動性・衝動性といった特性は、
標準化された教室環境や、工業化時代の労働モデルの中で、
「抑制すべき問題行動」として扱われがちでした。
しかし、AIが線形的なタスクや定型業務を代替しつつある現代では、ADHDの特性として語られることのある次のような力が、別の角度から再評価され始めています。
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非線形な思考プロセス
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パターン認識力
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極端な集中力(過集中)
これらは、環境が合えば、希少なリソースとして機能しうるものです。
「概念」だけでなく、企業戦略の文脈でも語られている
この変化は、単なる理念の話にとどまらず、企業の採用・組織設計の議論にも表れています。
多国籍企業では、神経多様性(ニューロダイバーシティ)を
「コンプライアンス(法令遵守)」としてだけでなく、
競争優位の源泉として捉える動きが広がっています。
たとえば、JPMorgan ChaseのAutism at Work関連で広く参照される数値として、特定職種での高い生産性差(48%〜、あるいは90〜140%といった表現)が繰り返し紹介されています。元データの条件や対象職種には注意が必要ですが、少なくとも「環境設計次第で成果が大きく変わる」という示唆としては非常に重要です。
また、Microsoftも神経多様性採用プログラムを継続的に展開しており、採用経路そのものを調整することで、多様な人材の力を引き出す実践を積み重ねています。
さらに、世界経済フォーラム(WEF)でも、Deloitteの見解として「一部の役割では神経多様な人材を含む職場の方が、最大30%生産的になりうる」という文脈が紹介されています。
ここで大事なのは「能力の有無」ではなく「環境との相性」
ただし、もちろん「ADHDなら誰でも高い成果を出せる」と短絡的な話ではなく…。
重要なのは、特性そのものではなく、
その特性が活きるように設計された環境・役割・評価軸です。
たとえば、ADHDの特性として語られることのある
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情報のフィルタリングの独特さ
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興味ベースでの集中の深さ
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切り替えの難しさ(裏返せば没頭の強さ)
は、公教育などの多くの環境設計では「困りごと」として区分されますが、
環境が合えば「探索力」「発見力」「推進力」に変わることがあります。
つまり、子どもの教育を考える上でも問われるのは、
「どう矯正するか」という視点だけではなく、
どんな環境ならその子の特性が資産として機能するかという視点です。
評価軸を1つに固定しない(学校の評価だけで世界を閉じない)視座を持ちつつ、
活かしどころをみつけていく視点が必要だと痛感しています。
試行錯誤のなかで、矯正の視点にぼんやりと俯瞰の視点を持ちながら、
資産として活かす視点も持ち続けたいと思っています。
(日々の忙しさのなかで同調的に視座が狭まりがちな自分への自戒を込めて)
参考・出典(メモ)
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World Economic Forum, Here’s how employers are addressing neurodiversity in the workplace(2023)
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World Economic Forum, How neurodiversity in the workplace drives business success(2024)
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Deloitte Insights, Neurodiversity in the workplace(2022)
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Deloitte Insights, Building a neuroinclusive workplace(2023)
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Microsoft(Neurodiversity Hiring Program 関連ページ)
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JPMorgan Chase “Autism at Work” に関する各種報道・解説記事